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連載SS第二十七話

あれから―4年の月日が経ち、フェイトは19才
なのはは14才になっていた―――

「なのは、お願い」

「はい。フェイトちゃん」

控え目な柄の白銀の着物その上から黒い家紋入りの羽織を肩にかけフェイトは襖に手をかけた。

「なるべく早く…帰って来るから…」

襖を開けなのはへと向き直ったフェイトは困ったように微笑んでそっとなのはの頬を撫でた。

「う、ん///行ってらっしゃい。フェイトちゃん」

「…行って、来ます。」

名残惜しそうになのはの頬からそっと手を離すフェイト…部屋から一歩外へと出るまでの間その視線はずっとなのはを捉えたままだった………

フェイト、ちゃんの……

自室から廊下の奥へと歩いてゆくフェイトの後姿を見つめるなのはの笑顔はだんだんと切なさを秘めたものへと変わってゆく…

「…ばか…」

当主であるフェイトを訪ねてくる来客は後をたたない…それは商談である事が多かったが、この頃は縁談や見合い話の類も増えてきている…なのははその事をフェイトでは無い者の口から聞いていた……いわゆる噂話というやつだ。

はぁ……

それからこうして訪問客に会いに行くフェイトを見送る度、なのはの胸はじくじくと痛むようになった。

だがその事をフェイトは知らない―知るはずも無い――

「失礼いたします。」

フェイトが来客用の部屋へと礼節をわきまえた動作で訪ねると先方はもう席に着いていた。

「おう。随分と遅かったじゃねぇか」

フェイトを見て二カッと笑う割腹の良さそうなこの人物こそゲンヤ・ナカジマ政界にすら通じているという力を持つ男…ハラオウン家と深い関わりを持つ御三家の一つの長である。

フェイトが畳の上へと膝をつき頭を下げようとしたその時―

「冗談だ。そんなに待っちゃいねぇよ」

くっくっくと楽しそうに笑いながらゲンヤ・ナカジマはフェイトにまぁ座れ、と促した。

「…それでは、失礼いたします。」

フェイトが自分の席へと正座をして座るとゲンヤ・ナカジマはフッと表情を緩め本題に入った。

「今日はな、オレんとこの娘がお前さんにどうしても会いたいって言うもんでな連れて来てんだ。会ってやってくれるか?」

「……それは構いませんが…」

フェイトの答えを聞いて満足そうにゲンヤはニヤリと笑う。

「おーいギンガ!入ってきなぁ!」

ゲンヤが後ろを向いて声を張り上げるとスッと襖が開いてその奥から淡い色の訪問着に身を包んだ年若い娘が深々と頭を下げそれからこちらの部屋へと入って来た。

「オレの娘のギンガだ。今年で16になる」

「お久しぶりです。フェイトさん」

父親の隣に座りニコリと人懐っこい笑顔を見せるその子にはどこか見覚えがあった。

もしかして…あの時の……

「久し、ぶりだね…ギンガ」

フェイトの記憶、夏…手を引かれ私は歩いている隣には笑顔の母さん。それから――もう一人…私よりも幼い女の子と手を繋いで歩いてる……あれから会う事は無かったけど…懐かしい、な……

「覚えていて…くださったんですね///」

嬉しそうにはにかんで笑うギンガを見てゲンヤはどうやら込み上げてくる笑いを堪えているようだった…ぱしっと手で口を覆っているのが何よりの証拠だ。

「ぶっ、ぶははぁ!あー駄目だ。オレぁこれでおいとませさせてもらうぜ?後は、おめぇさん達の好きにしな」

よっこいせっ!と立ち上がったゲンヤは真っ赤になって剥れるギンガを見ながら、じゃあな。と手を振って部屋を出て行った。

「///す、すみません!父が失礼な事を―」

父と娘のあまりのやり取りに面食らっていたフェイトだったが気を取り直すとにっこり笑ってギンガの分のお茶を入れようと手を伸ばした。

「お茶なら私が――あっ///」

勢いあまって急須を持っているフェイトの手に自分の手を重ねてしまったギンガは真っ赤になって慌てて手を引っ込めた。

「///す、すみません…私、その///」

「大丈夫。落ち着いて?お茶なら私が淹れるよ。君はお客さまなんだからもっと、くつろいでて良いんだよ?」

「は、はい///」

ギンガの分のお茶を湯のみに淹れながらフェイトは心の中で深い深い溜息をついた。

どうしよう…なのはとの約束…破りたくない…のに…

どうやら今夜は早く帰れそうにも無い…ナカジマ家の娘となれば無碍にも扱えないのだ…フェイトは帰った後、もしも冷たい態度をなのはに取られたらどうしよう?と一人で勝手に想像して悲しくなったようだ…。

なのは……

暗雲たちこめる中…フェイトとなのは二人の想いはまだ、交わらない―――

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