連載SS第二十一話
フェイトが逃げた男達の後を追っている途中、屋台で見つけた面を手に取って代金を静かに屋台のテーブルの上へと置く。
「…おじさん…これ、もらっていきます…」
「へい毎度!って、嬢ちゃんお釣り―お釣りー!」
呼び止める声が聞こえていないのか…そのまま歩き去ってゆく少女の後ろ姿を見ながら屋台の店主は頭をポリポリと掻いた。
「…何だありゃ?ま、いいか」
店の利益に繋がった客が置いていった金を手に店主は何事も無かったかのように呼び込みを続けた――
「おらっ!いいから出すもん出せよ!あぁ!」
「ひいっ、やめ、やめてください」
階段から少し離れた暗がりの中で先程の男達は追いかけていた酷く弱そうな少年に暴力をふるい金を脅し取っていた。
「あぐっ」
どさっと言う音と共に男達にボコボコにされていた少年は地面へと倒れ込んだ……
「へっ、弱っえぇなぁ?」
「でもコイツ結構、金持ってたみたいだぜ?」
「んじゃあ、これで飲みに行くとしますかっ」
おう、行こうぜ!男達が上機嫌でその場から去ろうとすると暗がりの中にいつの間にか黒い浴衣を着た誰かが立っていた。
「あぁん?何だぁ?」
暗がりで目をこらす男達…その時、上空で強い風が吹き雲が動いてゆく月明かりの下でじょじょにその姿が浮かびあがってくる。
「何だぁあいつ?変てこな面、つけやがって」
男が言うのも無理はないその人物が女だと言う事は体型や着ている服が女物の浴衣である事で分かるからだ…だがその顔は定かでは無い…なぜならその女が顔につけているのが狐の面だからだった――
「いいじゃねーの。あの面剥いだらすっげー美人かもしんないぜ?」
「お前らも好きだねぇ?まぁ退屈しのぎにはなるってもんだよな?」
「ちげぇねぇ!んじゃあ、いっちょやっちまうか?」
男達がニヤニヤと笑いながら面をつけて立っている少女へと近づいてゆく
「よぉ姉ちゃんー俺らと遊ばなーい?」
「つうか、タ・ダ・でやらせてくんねぇかぁ?」
「おっ前それはストレートすぎんだろ?」
ぎゃははっと笑いながら三人の男達の一人が少女の肩に触れようとした瞬間の事だった――
「お前達は―――を泣かせた」
少女の肩に触れようとした男が膝をおり地面へとドサリと倒れた――
「お、おい!どうしたってんだ!?」
口から血の混じった泡をふき白目を向いてピクピクと痙攣してる男の側に一人の男がかけよる。
「――これで、二人…」
狐の面をつけた少女が小さな声で呟いたのと同時にまた一人地面へと突っぷすようにして倒れた。
「ひっ、く、来るな…こっちに来んじゃねぇ!」
男の目には見えていた…大した力も無さそうな少女の掌が電流を放ちながら仲間の腹にメリメリと食いこんでゆく様を…
「な、何なんだてめぇは…!ちくしょおぉおやられてたまるかぁああ!!」
「―――絶対に、許さない…」
少女が殴りかかってくる男の拳を避け背中へと掌をあてた瞬間―男はバチバチイっと感電しながら吹っ飛び地面に倒れ、そのまま動かなくなった――
「ぅ…お狐…さま……?」
少年は地面に倒れながら今起こった事のすべてを目撃していた…静かに現れた狐の面をつけた少女の圧倒的な強さに少年はこの世のものではない不思議な力の存在を信じられずにはいられなかった。
「…た、助けてくれて…ありがとう……」
少年が礼を言うと狐の面をつけた少女が倒れている男達の尻ポケットからスッと取り返した物を手にこちらへと近づいてくる…
「あ、あのっ……」
「―――君なんかのためじゃない」
冷たい響きを含んだ声に少年はビクリと肩を震わせる…怒らせてしまっただろうか?とビクビクしている少年の側に投げて寄越された物…それは男達に乱暴され奪い取られてしまった少年の財布であった……
じゃり。じゃり。
静かに元来た道へと戻ってゆく少女の後姿がすうっと暗がりに消えてゆくのを見て少年はやはりあれは狐の神様だったのだと感謝するばかりであった―――
早くなのはの所に戻らないと……
なのはを悲しませた男達をフェイトはどうしても許せなかった…同じ痛みを味合わせてやりたかった…でも、こんな事をしてもなのはの心の痛みは消えはしないのだと頭では分かっていた…でもどうしても許せなかったのだ…
フェイトの中で何かが変わり始めた―
それは本人でも気付かない些細な変化であった…フェイトはなのはの為なら自分の手を汚してしまう事すら躊躇しなくなってゆくのであった―――
がさがさっ。
なのはの元へと戻る途中、面を捨て林の中を移動していたフェイトはある物を買いにまだ祭りが行われている神社へと遠回りをして戻っている。
「…なのは、喜んでくれるかな?」
フェイトが向かったのは、なのはと二人で見に行ったあのガラス細工の店である。
「喜んでくれるといいな……」
大切に育ててゆくはずだった金魚達を失い…悲しみに暮れるなのはを元気付けてあげたい一心だった…例の屋台でなのはが欲しそうにしていたあの赤い宝石のような真ん丸いガラス細工を買ってフェイトは巾着の中へと大事そうにそれをしまった。
そうして、まだ泣いているであろうなのはの所へとフェイトは早足で戻ってゆくのだった――
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